- October 17, 2007 12:31 AM
- sake
『夏子の酒』:講談社。尾瀬あきら著。 1988〜1991 年の『モーニング』連載作品。
読了。カップ酒とは無縁の作品だけど、とてもおもしろい作品だった。日本酒の基礎知識だけじゃなく、日本酒をめぐるいろいろな問題に関する知識も得られる。後半は、人間ドラマの比重が増えてくるので、いまひとつだけど、前半は濃厚。
前にも書いたけど、安全な米作りをすることの難しさを描いているエピソードが興味深かった。農業人口が減り続ける中、作業量軽減のために害虫駆除の農薬を散布する、さらに軽減するために空中散布をする。雑草駆除のために除草剤を撒く。収穫量を増やすために化学肥料をつぎ込む。結果、土壌は汚染され、土地は痩せていく......。自分でも家庭菜園をやっているので、なんとなくわかることもある。夏場の雑草との戦いだけでもへとへとになる。たったの 20 m2 でも......。消費者としては、より安全なものを口にしたい。でも、それと同時に安全な食品をできれば安く手に入れたい。生産の場だけでなく、消費の場においても矛盾がいっぱいだ。
大手酒造メーカーに席巻される日本酒市場も話題としては根深い。日本国内のいろんなところを旅しているけど、どこに行っても大手酒造メーカーの酒が幅を利かせている。特にカップ酒では、その傾向は顕著。四合瓶や一升瓶ではそれほどでもないけど、カップ酒ともなると、実際にはなかなか地元のものを入手するのも簡単ではない。町の小さな酒屋を覗いてみることもあるのだが、カップ酒コーナーには申し訳程度に「ワンカップ大関」なんかが置いてあったりする。しんとした店に入ると奥から腰の曲がったおばあさんがごそごそ出てきて、「はい、いらっしゃい」と声をかけてくれた瞬間には、その店には用がなくなっている......なんてことも多い。売れるかどうかもわからない地酒を仕入れるよりは、
まじめによい酒を醸すことの難しさ、それを消費者に届けることの難しさ。そんなことを『夏子の酒』は教えてくれた。
そう言えば、水に関する話題がほとんどなかったな。水は、酒造りに相当に重要な役割を担っているんだけど......。
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